後遺障害における逸失利益の計算要素と争点になりやすいポイント

事故による怪我が完治せず後遺障害となった場合、今までとは同じように体を動かせなくなり、日常生活や社会生活に支障が出ることが考えられます。

このような経済的損失を賠償してもらうために、ここでは後遺障害における「逸失利益」の計算方法と争点になりやすいポイントを解説します。

後遺障害による逸失利益は損害賠償の一部

事故で受けた怪我が完治せず後遺障害として残った時、障害があることで日常生活や仕事に大きな影響を及ぼすことがあります。

後遺障害の程度や家事・仕事の内容によっては、従来通りの働きができなくなり、給与減や配置転換、あるいは退職に至ることも少なくありません。

被害者としては、加害者が起こした事故により生活が激変しただけでなく、将来的に得られたはずの収入が減額あるいは途絶えることになるため、その無念さは計り知れないでしょう。

そこで、将来的に得られたはずの利益を賠償してもらうために、加害者には逸失利益分を請求することが認められています。

損害賠償の区分で言えば、事故により被害者に生じた金銭的な不利益を財産的損害と呼び、逸失利益は財産的損害の一部です。

さらに財産的損害は、支出を余儀なくされる積極的損害と、事故により得られなくなった将来的な収入等を意味する消極的損害に分けられ、逸失利益はこのうち消極的損害に該当します。

逸失利益の計算方法

後遺障害の逸失利益は以下の算定式で導き出し、障害を負わなければ得られたであろう利益分を一括で受け取ることになります。

  • (基礎収入)×(労働能力喪失率)×ライプニッツ係数=逸失利益

算定式に用いられる各要素は、次のような意味合いを持っています。

基礎収入

被害者本人が事故前に得ていた年収や所得がこれに当たり、障害を負わなければ今後も得られたであろう収入分を指します。

労働能力喪失率

後遺障害により制限されることになった労働能力を喪失率として乗じます。
後遺障害の等級によって労働能力喪失率は変わり、14級では5%、1級では100%となっています。

労働能力喪失期間

原則として67歳を上限とし、症状固定時点以降の期間について労働能力を失ったとして計算します。

ライプニッツ係数

逸失利益は、後遺障害を負わなければ定期的に受け取れたはずの収入を、現時点で一括受け取りする仕組みになっています。

このため、将来分を現時点で受け取ることで生じる利益分を控除する必要があり、ライプニッツ係数(中間利息控除係数)を乗じて公平性を保つことになっています。

逸失利益の計算時に生じやすい争点

逸失利益は相手方保険会社に請求し支払ってもらいますので、被害者側の主張と相手方の主張がかみ合わず交渉が難航するケースが多々あります。

中でも基礎収入や労働能力喪失期間は争点となりやすく、できるだけ評価額を下げて支払額を抑えようとする相手方に対し、正当な主張をどうやって認めてもらうかが重要なポイントとなってきます。

基礎収入

毎月定額の給与をもらっていたサラリーマン等の場合は、年収が安定しているため逸失利益の計算に問題が生じることはあまりありません。

また、主婦や未成年者についても、賃金センサスを当てはめて基礎収入を算出するため、比較的計算はわかりやすいものとなります。

問題化しやすいのは、収入の安定しない自営業者の場合です。

相手方保険会社は自営業の不安定さを指摘し、評価を下げようとすることが多いですから、被害者側としては過去の確定申告書や帳簿等から収支状況を丁寧に拾い、今後見込まれるはずの売上や利益について主張していくことになります。

労働能力喪失期間

治療を続けたにも関わらず完治できない状態を後遺障害と呼びますので、症状固定時から上限年齢までの期間を労働能力喪失期間として考えます。

一般的に元気に働けるとされる67歳を上限年齢としており、例えば30歳で後遺障害を負った人の労働能力喪失期間は37年間となります。

未就労者の場合は、高校卒業時点を基準とする場合は18歳、大学卒業時点を基準とする場合は22歳を始点とし、67歳までの期間を算出します。

67歳を超える高齢者の場合は、平均余命の2分の1を当てはめて計算します。

労働能力喪失期間は基本的に上記のルールに従って算出するのですが、問題は、相手方保険会社が労働能力喪失期間を短く設定しようとする点にあります。

被害者側としては、最大限の労働能力喪失期間を確保すべきなのですが、保険会社は生活への支障はそこまで深刻ではないと評価し、被害者が主張する期間よりも短期間で逸失利益を見積もろうとします。

従って、被害者側として重要なのは、まず後遺障害等級を1つでも上の等級にすることだと言えます。

後遺障害が上の等級になるほど労働能力喪失期間も長くなる傾向にありますので、症状固定後は適正な等級獲得を目指さなければなりません。

同時に、後遺障害による支障を正当に評価してもらうためには、丁寧に情報を拾い粘り強く交渉する必要があるのです。

いずれの場合も、弁護士を介入させて通院時から適正な後遺障害等級の獲得を目指し、十分な逸失利益を得るための準備を同時に進めていくことが大切です。

逸失利益の獲得にはまず適正な後遺障害等級の認定から

逸失利益は、後遺障害を負ったことで将来的に収入減や無収入となることに対する賠償です。

つまり、前提として後遺障害等級を獲得している必要があり、その程度が重いほど賠償金は大きくなるのです。

当事務所としても、後遺障害等級の認定結果によって賠償金額の8割が決まるという感触を持っているため、早い段階から依頼者と二人三脚でより上の等級を獲得できるよう尽力しています。

逸失利益を含む賠償金請求においては、被害を受けた側の様々な事情をどこまで相手方や裁判官に理解してもらうか、という点が重要だと考えています。

このため当事務所では、依頼者本人はもちろんのこと、主治医に対しても直接お話を伺い、弁護士自身が細かなニュアンスに至るまで理解した上で、交渉あるいは裁判に臨むようにしているのです。

後遺障害の程度だけでなく、本人がどのような仕事に従事しどのような役割を担っていたのか、後遺障害によって家庭や仕事にどのような影響を及ぼしているのか、というところまで踏み込んで交渉に反映させるのです。

依頼者1人1人の実情に沿って一歩踏み込んで取り組めば、逸失利益についてもきちんと主張を裏付けることはできますし、十分な条件を確保できる可能性も高くなります。

逸失利益についてお困りの際は、ぜひ一度当事務所までご相談ください。

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