2つの基準における入通院慰謝料の比較と算出方法

2つの基準における入通院慰謝料の比較と算出方法

交通事故で受けた人的被害のうち、怪我や治療を強いられたことに対する精神的苦痛について、入通院慰謝料が支払われます。

金額の計算は、自賠責基準と任意保険基準、裁判所基準のうちいずれかに基づいて行われますが、ここでは、慰謝料計算の基本となる自賠責基準と金額が最も高くなる裁判所基準を比較し、それぞれの算出方法を解説します。

精神的な苦痛に対するお詫びと慰めを表したものが慰謝料

事故で被害者に怪我を負わせたことにより、被害者は怪我の部位について体の自由が制限され、日常生活に大きな支障をきたします。

また、怪我を治すために長期的に入通院する必要があり、これにより家事や仕事を休まざるを得なくなる場合もあります。

このような事態は、被害者にとって青天の霹靂であり、大きな精神的苦痛をもたらします。
そこで加害者は、被害者に対してお詫びと慰めの意味として、慰謝料を支払うのです。

ただし、精神的苦痛は目に見えるものではなく、金額として具体的に表すことが困難であるため、慰謝料計算の基準に基づいて金額を算出することになります。

自賠責基準における入通院慰謝料の計算方法

被害者に対して最低限度の補償を行う自賠責保険(※)では、以下の算定式を用いて慰謝料を計算します。

※自賠責保険の支払基準が改正され、令和2年4月1日以降に発生した入院慰謝料については、新基準が適用されます。令和2年4月1日以前に発生した入院慰謝料については、1日につき4,200円です。

  • 4,300円✕治療日数=入通院慰謝料

次のうちいずれか数値の小さい方を治療日数として採用し、基本額である4,300円に乗じて金額を算出します。

  • 入院日数+通院日数の合計
  • 入院日数+実通院日数の合計の2倍

従って、1ヶ月間の入院を経て、その後7ヶ月間の通院期間のうち実際に診察を受けたのが60日だった場合、入通院慰謝料は次のように計算します。

治療日数の計算

「入院日数+通院日数の合計」だと30日+210日=240となり、「入院日数+実通院日数の合計の2倍」だと(30日+60日)✕2=180ですから、この場合の治療期間は180日が採用されます。

これを計算式に当てはめると、4,300円✕180=774,000円が自賠責基準による入通院慰謝料となることがわかります。

なお、自賠責保険では、被害者に対する賠償金の上限額が120万円となっており、これには慰謝料も含まれますので、治療費や休業補償等との兼ね合いにも注意する必要があります。

裁判所基準における入通院慰謝料の計算方法

裁判所や弁護士は、過去の交通事故訴訟における判例をもとに、入通院慰謝料を算出しています。

最低限度の補償を目的とした自賠責基準と異なり、あらゆる事故パターンにおける入通院慰謝料のデータを目安として用いるため、金額は自賠責基準よりもはるかに高額となります。

過去の事故例や訴訟における入通院慰謝料のデータは、日弁連編纂の「赤い本」と呼ばれる損害賠償額算定基準に表としてまとめられています。
表の横列は入院慰謝料、縦列は通院慰謝料の目安額を示しています。

裁判所基準では個々の被害者の入通院状況がより詳しく評価され、入院慰謝料と通院慰謝料のそれぞれに対し目安額が設けられています。

例えば、入院1ヶ月と通院7ヶ月に及ぶ治療を受けた場合、入院慰謝料は「1ヶ月」に対応する金額が、通院慰謝料は「合計治療期間に対する通院慰謝料-入院日数に該当する通院慰謝料」がそれぞれ適用されます。

従って、赤い本の別表1によると、入院1ヶ月の場合は53万円が入院慰謝料となることがわかります。

一方、入通院の合計8ヶ月間に対応する通院慰謝料を確認すると132万円であり、ここから入院期間1ヶ月分に対応する通院慰謝料を差し引きますので、132万円-28万円=104万円が実際に支払いを受ける通院慰謝料となります。

入院慰謝料が53万円、通院慰謝料が104万円ですから、裁判所基準では合計157万円を受け取ることができるのです。

自賠責基準では入通院合わせて756,000円だったものが、裁判所基準になると157万円になり、その差はおよそ2倍にもなりますので、弁護士を入れて裁判所基準による慰謝料請求を行うべき事がわかります。

入通院慰謝料に関する保険会社との交渉は弁護士にお任せを

当事務所の経験上、保険会社は、被害者側に弁護士がついているかどうかで対応の線引きを行っているものと考えられます。

従って、本人がいくら正当な主張をしたとしても、弁護士がついていなければ訴訟リスクも低いため、保険会社はあくまでも加害者側としての主張を崩しません。

ですから弁護士を介入させることによって、根拠に基づく主張を行いつつ、いざとなれば訴訟もできるというプレッシャーを相手に与えることは非常に大切なことなのです。

また、当事務所は地元でも特に交通事故へ注力し経験も豊富であることから、保険会社が譲歩しやすい言い方や否定されやすい言い方を十分に心得ています。

一人で賠償金問題のプロに挑むよりも、弁護士を入れた方が対等な交渉が可能になり、賠償金増額の可能性もより高くなることが期待できます。

インターネットで自ら赤本の基準を調べ、保険会社と交渉することも不可能ではありませんが、インターネット上には正誤含めて膨大な情報があり、取捨選択が難しいと言えます。

同時に、交通事故関係の法律や赤本等の記載事項も、常に最新の状態を保つために随時改訂されていることから、インターネットだけで正しい情報を得て活用することは極めて困難と言わざるを得ません。

インターネットで見つからない情報の中にも、実は非常に重要なものが山ほどあるのです。
最新情報のもとに保険会社に対する正当な主張を行っていくためにも、ぜひ当事務所までお気軽にご相談ください。

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