交通事故による怪我治療で使用できる保険の種類
事故で怪我を負った場合、治療のために病院にかかる必要があります。
その際に使用できる保険は大きく4種類あり、それぞれの特徴を把握しておくことが大切です。
ここでは、事故に遭った時に使える保険の種類と特徴について解説します。
治療の目的は怪我の回復と賠償金請求の土台作り
交通事故後はすぐ病院にかかり、治療を開始しなければなりません。
その目的として、次の2点が挙げられます。
怪我の回復のため
怪我を負ったことにより、被害者はこれまでと同じように仕事や家事等を行うことができず、行動に制限が出てしまいます。
治療中は経済的損失が生じ、家族にも負担をかけてしまうため、本人としてはできるだけ早い回復を目指したいところです。
加害者への適正な賠償準備のため
自分の心や体、車や持ち物等に損害を与えた加害者には、十分に賠償してもらう必要があります。
賠償金を求めるための土台として、後遺障害の等級申請が重要要素となりますので、通院中から周到に準備し、適正な賠償請求を行えるようにすることが大事です。
これらの目的に基づき、相手方の自賠責保険・相手方の任意保険・労災保険・健康保険からいずれかを選んで治療を行うことになります。
自賠責保険
車両を運転する全ての人は、自賠責保険に加入しなければなりません。
自賠責保険は事故被害者に対する最低限の補償を行うものですが、対象は人的被害のみとなり、物損分は補償されません。
従って、車の修理代等については、相手方の任意保険会社から支払いを受けることになります。
相手が任意保険に加入していなかった場合は相手から直接支払いを受けることになりますが、相手に資力がない場合は補償を受けられないため、被害者側の損失が拡大する可能性があります。
自賠責保険による補償額には上限があり、怪我に対しては120万円、後遺障害に対しては等級に応じて75万円~4,000万円、死亡に対しては3,000万円とされています。
事故後の治療で出費がかさむ被害者は、示談成立を待たずに相手方自賠責保険に対して保険金の請求を行うことができます。
これを被害者請求と言い、後遺障害等級申請前であっても手続きが可能なため、被害者にとっては大変安心できる仕組みとなっています。
任意保険
名称通り任意で加入する保険ですが、自賠責保険による補償では不十分な場合、不足分を保険から賄うことができるため非常に心強い存在だと言えます。
任意保険は主に、賠償責任保険・傷害保険・車両保険の3種に分かれており、それぞれ補償対象が異なっています。
賠償責任保険
被害者に対する人的損害は対人賠償保険で、車や所有物等の損壊に対しては対物賠償保険で補償します。
傷害保険
事故を起こした運転者やその車両の同乗者が怪我をした場合、人身傷害保険により補償されます。
似た保険として搭乗者傷害保険がありますが、こちらは一定の通院期間を経てから補償が行われます。
事故の加害者が無保険で十分な賠償が得られない場合、無保険車傷害保険に入っていれば賠償金相当分の保険金が支払われます。
さらに、自損事故保険に入っておけば、1人で起こした事故や被害者側の過失が0である場合でも保険金が支払われます。
車両保険
過失割合に関わらず、事故で損壊した車に対して保険金が支払われます。
これにより、車の修理代や買い替え費用を賄うことができます。
労災保険
事業所に雇用されている労働者は、厚生労働省が管轄する労災保険により補償を受けることができます。
加入は事業所単位であるため、事故が起きた際に当事者が加入手続きをする必要はなく、労働基準監督署に対して給付請求を行って給付金を受け取ることになります。
以下の2種類のうちいずれかに該当する事故に対して補償が行われます。
業務災害
業務に携わっている間に起こった事故で怪我や病気となった場合に給付金が支払われます。
通勤災害
通勤途中に起こった事故で怪我や病気となった場合に給付金が支払われます。
健康保険
労災の適用条件に当てはまらない場合であれば、健康保険を使って治療を受けることができます。
昭和43年には、交通事故による治療にも健康保険が使える旨が厚生省から通達されており、平成23年にはより明確に医療給付対象であることが公表されています。
従って事故被害者は、健康保険による治療か、自由診療で加害者に治療費を負担してもらうか選択することができるのです。
自由診療で注意したい点としては、被害者側として過失割合が認められる場合、その程度によっては自己負担分が大きくなることが挙げられます。
ですから、過失の程度に応じて健康保険を上手に活用する必要性が出てくるでしょう。
インターネットの情報収集だけではなく直接弁護士に相談することが大事
昨今は、インターネット1つでどのような情報でも集めることができますが、交通事故問題については規定が随時更新される可能性があります。
インターネットを通して理解したつもりでも、実際にはその情報自体が古くなっていることもあるため、独断で各種保険の利用を進めると、思わぬところでデメリットに遭遇しかねません。
このため、事前準備としてインターネットを活用しつつ、実際の対応については弁護士に直接相談し、必要に応じて依頼した上で正しく保険を活用していくことが非常に大切です。